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根管治療と精密根管治療の違いは?マイクロスコープを活用するメリットをご紹介

皆さんは「マイクロスコープ」をご存じですか?マイクロスコープとは、肉眼では見えない細かい部分を拡大して見ることができる歯科用顕微鏡のことです。肉眼では見えないものが見えることによって、より精度の高い歯科治療が受けられます。虫歯治療をはじめ、根管治療や審美歯科治療、歯周病治療など、さまざまな歯科治療で用いられます。ここでは、根管治療と精密根管治療の違いやマイクロスコープを活用するメリットをご紹介します。

 

 

■根管治療とはどういう治療?

歯の根っこには、「歯髄(しずい)」と呼ばれている神経と血管が通っている管があり、これを「根管(こんかん)」と言います。そして、根管治療とは、歯髄が細菌感染し、炎症が起きた際に行われる治療のことです。根管治療は、以下の2種類に大きくわけられます。

●抜髄

虫歯が大きく歯髄まで進行してしまった場合、神経と血管を取り除く治療のこと

●感染根管治療

以前抜髄した歯の根管に細菌が侵入し、炎症が起きてしまった際に行われる治療のこと

 

虫歯を放置すると、細菌が歯髄まで到達し「歯髄炎(しずいえん)」を引き起こします。主な症状は、冷たいものや熱いものがしみる、強い痛みが生じることなどが挙げられます。初期の段階であれば炎症を抑えられる場合があるため、抜髄を行う必要はありません。しかし、炎症が抑えられない場合は、根管治療で神経と血管を取り除く「抜髄」が必要になります。
また、抜髄によって神経と血管を取り除いた歯でも細菌が進入すると、炎症を引き起こし、かむと痛みが生じたり、歯の根っこの先に膿が溜まったりすることがあります。これを「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」と言い、放置するとあごの骨にまで炎症が広がり、歯を支えている骨が溶けて抜歯が必要になることがあります。このような場合、「感染根管治療」をします。

 

●根管治療の流れ

根管治療は、一般的に以下の流れで行います。
1.局所麻酔
2.被せ物や虫歯の除去
3.歯髄や以前に充填した薬剤の除去
4.洗浄
5.根管充填
6.被せ物の治療

 

通常、抜髄は神経が生きているので局所麻酔をしてから始めます。感染根管治療の場合は、すでに神経が取り除かれているので基本的に麻酔は必要ありません。細菌感染した歯髄や以前に充填した薬剤を取り除きます。根管内の洗浄・除菌を繰り返し行い、根管内が十分にきれいになったら、再感染を起こさないように根管内に薬剤をすき間なく充填します。その後、根管治療を行なった歯に被せ物を装着して終了です。

 

 

■精密根管治療とは

根管内は小さく複雑な形をしており、根管治療は歯科治療の中でも繊細さを極める難しい治療です。しかし、保険の根管治療は、使用できる器具や材料、時間に制限があるため、成功率は30~50%と言われています。
一方、精密根管治療は、歯科用CTやマイクロスコープなどを用いて、根管内を解剖学的に観察しながら、歯髄や細菌によって汚染された部分を無菌的に取り除きます。保険診療と違って、使用できる器具や材料、時間に制限はありません。それにより、成功率の高い治療が行え、「再発させない」「歯を残す」治療が可能になります。
ここでは、当院で行なっている精密根管治療の取り組みについてご紹介します。

●歯科用CTによる正確な診査診断

精密根管治療の前は、必ずレントゲン撮影やCT撮影による診査診断をします。パノラマやデンタルといったレントゲン撮影は、平面の画像で表示されますが、歯科用CTは立体的な画像で表示されます。精密根管治療では、歯科用CTを活用することで歯の根っこや根管の形が確認できるため、正確な診査診断が可能になります。

●細菌の侵入を防ぐラバーダム防湿

ラバーダムとは、治療する歯を露出させて使用するゴム製のシートのことです。唾液には数多くの細菌が含まれており、根管内に唾液が入ってしまうと再感染の原因になります。ラバーダムを使用することで、唾液の侵入を防ぐのと同時に、器具や薬剤の誤飲を防ぐことができます。

●マイクロスコープによる精度の高い治療

マイクロスコープとは、患部を拡大視できる歯科用顕微鏡のことです。根管内は複雑な形であることに加え、暗く、肉眼では見ることができません。マイクロスコープを活用することで患部を拡大視し、明るく照らし細部を把握しながら治療することが可能になり、精度の高い治療が行えます。

 

 

■マイクロスコープによる根管治療のメリット

マイクロスコープは上記でも紹介した通り、肉眼では見えない部分を拡大視して見ることができます。マイクロスコープは、虫歯治療をはじめ、根管治療、被せ物の治療、歯周病治療など、さまざまな歯科治療に用いられます。特に細かい作業が求められる精密根管治療では、マイクロスコープを有効に活用できるので欠かせません。ここでは、マイクロスコープによる根管治療のメリットを4つご紹介します。

●治療の精度が高まる

肉眼での治療は細部まで把握できないため、歯科医師の経験や勘による治療が行われていました。マイクロスコープを活用すると肉眼では見えなかった細部も高倍率に拡大できるので、見えないものが見えるようになります。それにより、細部を把握しながら精度の高い治療が可能になります。

●再治療のリスクを軽減できる

肉眼の治療では、根管の見落としや細菌に汚染された部位の取り残しが発生する可能性があります。マイクロスコープは、肉眼では見えない部分も細部まで鮮明に把握できるので、見落としを防ぎ、再治療のリスクを軽減できます。

●負担が少ない

マイクロスコープで拡大視することにより、虫歯や細菌に汚染された箇所だけを削る治療が可能になり、健康な歯を最大限に残せます。歯にかかる負担が少なく、傷口も小さくて済むため、痛みや腫れが早期におさまることも期待できます。

●成功率が高まる

従来の根管治療では、感染部位が正確に確認できないため、腫れや痛みを繰り返してしまうことがあります。マイクロスコープを活用することで、感染部位の確認ができ、取り残しを防ぐことが可能です。その結果、根管治療の成功率が高まります。

 

 

■まとめ

マイクロスコープを活用した精密根管治療は、従来の肉眼での根管治療では見えなかった細菌に汚染された部分や、根管の内部などを見ることができるようになります。それにより、根管治療の精度は大幅に向上し、歯の寿命をのばすことが可能になりました。ただし、精密根管治療は従来の根管治療よりも高度な技術が必要なため、歯科医師の経験や技術力が求められます。当院では切磋琢磨し、技術力のある歯科医師が精密根管治療にあたります。根管治療を行なっても症状が改善されない方、ほかの歯科医院で抜歯が必要と診断された方は、お気軽にご相談ください。