院長のひとりごと
「予防で人生を豊かにする」── 当院がこの言葉を掲げる理由

「予防歯科」と聞いて、みなさんは、どんなイメージが浮かびますか。
定期的にクリーニングに通うこと。
歯石を取ってもらうこと。
「虫歯にならないように気をつけましょうね」と言われること。
間違いではありません。でも、それだけだと思われているなら、少しもったいないかもしれません。
私たちが「予防」という言葉に込めている意味は、もう少し広いのです。
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予防の先にあるもの
想像してみてください。
70歳になったとき、自分の歯でステーキを噛みしめている自分。
80歳になっても、孫に向かって大きな口を開けて笑っている自分。
90歳になっても、「今日のごはん、おいしかったね」と自分の言葉で伝えている自分。
これは夢物語ではありません。
実際に当院に長く通ってくださっている患者さんの中には、70代、80代でも自分の歯でしっかり食事を楽しんでいる方がたくさんいらっしゃいます。
その方々に共通しているのは、特別なことをしているわけではないということです。
若いうちから、あるいは気づいたときから、コツコツと予防を続けてきた。ただそれだけです。
私たちが目指しているのは、その「ただそれだけ」を一緒に続けていくことです。
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なぜ「人生を豊かにする」なのか
歯科医院が「人生を豊かにする」と言うのは大げさだと感じるかもしれません。
正直に言えば、私自身も開業したばかりの頃には、こんな言葉を掲げる発想はありませんでした。
変わったのは、何千人もの患者さんと長い時間を過ごしてきたからです。
ある60代の女性の話をさせてください。その方は長年、奥歯の調子が悪く、食事のたびに片側だけで噛んでいました。「もう歳だから仕方ない」とおっしゃっていました。
きちんと治療を終え、定期的なメインテナンスに通い始めて1年ほど経った頃。診療室でこうおっしゃったのです。
「先生、最近また友達とランチに行くようになったんです」
歯が良くなったから外食に行けるようになった
──それだけの話に聞こえるかもしれません。
でも、その方にとっては「友人との時間を取り戻した」ということです。
食事を楽しめる。会話を楽しめる。笑い合える。
それは確かに、人生が豊かになったということだと思いました。
歯科医療は、命に直接関わる医療ではないかもしれません。
でも、人生の質には、深く関わっている。
この確信が、「予防で人生を豊かにする」という言葉になりました。
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噛みしめる喜びと、素敵な笑顔
私たちが患者さんに届けたいものを、あえて2つに絞るとすれば、こうなります。
「噛みしめる喜び」と「素敵な笑顔」。
何でもおいしく食べられること。
自分の口元に自信を持てること。
この2つが揃ったとき、人は自然と前向きになれる。
自分を好きになれる。人と会いたくなる。
そういう場面を何度も見てきました。
そしてこの2つは、治療だけで手に入るものではありません。
患者さんご自身が日々のケアを続け、私たちが定期的にサポートし、二人三脚で守り続けていくものです。
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健康づくりの「パートナー」でありたい
私たちは、患者さんの「健康づくりのパートナー」でありたいと考えています。
パートナーですから、一方的に指示する立場ではありません。
「もっとちゃんと磨いてください」と叱る存在でもありません。
患者さん一人ひとりの生活があり、仕事があり、家庭があります。
忙しくてなかなか磨けない時期もあるでしょう。
甘いものが好きで、やめられないこともあるでしょう。
それを否定するのではなく、その中で「無理なく続けられる方法」を一緒に考える。
「あなたの人生に歯科医療がどうお役に立てるか」
この問いを持ち続けることが、私たちの予防の出発点です。
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「もっと早く来ればよかった」と言わせたくない
患者さんからよくいただく言葉があります。
「もっと早く来ればよかった」
うれしい言葉ではあります。でも本音を言えば、できればこの言葉を聞きたくないのです。
「もっと早く」ではなく、「ちょうどいいタイミングで出会えた」と思っていただけるように。まだ困っていない段階から、あるいは小さな違和感の段階から、気軽に来ていただける場所でありたい。
予防で人生を豊かにする。
これは私たちの理想であると同時に、患者さんへの約束でもあります。
今通ってくださっている方にも、まだ出会えていない方にも、この言葉を届けたいと思っています。









菊池歯科クリニック 院長 菊池健志