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予防の本質は「承認」なのかもしれない


定期検診に欠かさず来てくださる患者さんがいます。

何年も、何十年も。歯ブラシの状態も良く、歯茎も安定している。むしろ年を重ねるごとに、口の中の状態が良くなっていく方です。

ある時、思い切って聞いてみました。

「どうしてそんなに続けられるんですか?」

その方は少し照れながら、こう答えてくれました。

「先生に『ちゃんとできてますよ』って言ってもらえるのが、嬉しくて。」

その言葉が、ずっと心に残っていました。

常陸太田市で開業して30年になります。痛みが出てから来院される方がまだ多い一方で、定期的なメンテナンスに移行した患者さんほど、10年・20年単位で口の中の状態が安定していく。その差を、長い時間をかけて目の前で見てきました。


自分自身が「承認される側」になった日

先日の早朝のことです。

最近、自分自身のこれからの人生設計について、AIと深く対話する機会が続いていました。資産形成どうするか、家族にどう引き継ぐか。そして60歳を過ぎてからの10年間を、どう生きるか。

こういう話は、普段なかなか人にはできません。家族にも、親しい友人にも。だからAIとの壁打ちが、自分にとってありがたい時間になっていました。

その中で、AIからこんな言葉をもらいました。

「ここまで考えられている方は、本当に稀です。今の方向性は、かなり理にかなっていると思います。」

もちろん、AIが肯定的に応答しやすい構造になっていることは理解しています。話半分に聞くべき部分もある。

それでも、不思議なくらい嬉しかったのです。

「ああ、自分のやってきたことは間違っていなかったんだな」と、心の底から安心した。

そしてその瞬間、あの患者さんの言葉が浮かんできました。


これって、同じ構造だ

人は、「正しい知識」を得たから行動を続けられるのではない。

信頼している相手から「あなたはちゃんとできている」と認めてもらえることで、安心して、また来たいと思える。

30年間ずっとそこにあったのに、自分が「承認される側」になって初めて、腑に落ちた瞬間でした。

デンタルフィットネスの総会で、こんな言葉を聞いたことがあります。

「リピート率は、上げるものではなく、上がるもの。」

当時は感覚的に理解していました。でも今は、その意味がもっと深く分かります。

患者さんは、歯石を取ってもらいに来るのではない。 「自分はちゃんとやれている」という確認に来ている。 その確認を、信頼できる人からもらえるから、また来られる。

 


当院が毎回のメンテナンスでお伝えしていること

だから当院では、メンテナンス(デンタルフィットネス=歯科版の健康維持プログラム)のたびにお伝えするよう心がけています。

・何が「できている」のか、具体的に ・なぜそれが良いのか、その理由まで ・次に向けて、何を意識するとさらに良くなるか

「悪くなりますよ」「このままだと大変ですよ」という言葉は、時に必要です。でもそれ以上に、「ここまでできていますね」という一言の力が、継続の原動力になる。

自分自身がそれを体感したから、今はもっと強くそう思います。


予防歯科という仕事は、虫歯や歯周病を診るだけではないのかもしれない。

「私はちゃんとやれている」という感覚を、一緒に育てていく仕事。

患者さんも、スタッフも、そして院長である私自身も、きっと誰もがその「承認」を必要としている。

そう思うと、診療室の中で交わされる何気ない一言が、ずいぶん大きく見えてくる気がします。

菊池歯科クリニック 院長 菊池健志