ブログ

保険のCAD/CAMとセラミック、どっち?|削り直しを防ぐ1day治療を院長が解説

この記事の要点
保険でも白い歯(CAD/CAMインレー)は入りますが、すき間から再発しやすく「やり直し」を早めます。当院が自費の1dayセラミックをすすめるのは、見た目の白さのためではなく、再治療の連鎖(レストレーションサイクル)を遅らせ、その歯を一日でも長く残すため。その日のうちに接着する「同日接着」が再発を防ぐ臨床的な理由と、保険との違いを正直にお話しします。

*************************

 

こんにちは。菊池歯科クリニックの菊池です。

いまは保険でも白い歯(CAD/CAMインレー)が入るようになりました。
「白いなら、それで十分では?」と思われるかもしれません。それでも当院では、健康意識の高い方や、お忙しい社会人の方にこそ、あえて自費の1dayセラミックインレーをおすすめしています。
今日は、その本当の理由をお話しします。

 

そもそも、虫歯の治療は「治る」わけではありません

まず、いちばん大切な前提からお話しします。
虫歯には、自然に治る力(自然治癒力)がありません。骨折のように元通りにくっつくことも、風邪のように治癒することもないのです。

歯科治療でできるのは、虫歯になった部分を完全に削り取り、失われた場所を人工物で補うこと——ただ、それだけです。
どんなに優れた材料を使っても、所詮は人工物であり、自分の天然の歯には遠く及びません。

少し極端な言い方を許してください。それは、目が悪くなったからと目を取り出して義眼を入れたり、手の具合が悪いからと手を切り落として義手を着けたりするのに、どこか似ています。
本物の代わりは、本物にはなれない。だからこそ、できるだけ削らず、できるだけ天然の歯を残すことが、何より大切なのです。

 

本当の敵は「虫歯」ではなく「やり直し」

しかも、お口の中はとても過酷な環境です。毎日、熱いものから冷たいものまで、高温多湿の中で、強い力に耐えながら使い続けられています。
ですから、どんなにしっかり治療をしても、その修復物が一生もつことは、基本的にはとても難しいのです。

そして虫歯の治療は、一度で終わりではありません。多くの場合、こんな坂道をたどります。

浅い虫歯を削ってレジン(プラスチック)を詰める → すき間から虫歯が再発する → もっと大きな詰め物になる → またすき間から再発する → 削って神経を取り、被せ物を入れる → そして最後は、歯を抜く。

これを私たちは「レストレーションサイクル」と呼んでいます。

やり直すたびに、歯は削られ、小さく、弱くなっていく。
そして大切なのは——歯のやり直しには、回数の上限があるということです。1回やり直すごとに、その歯の“残り回数”は確実に減っていきます。

だから私がいちばん大切にしているのは、見た目の白さではなく、この「やり直し」をできるだけ起こさないこと。そのスピードを、できるだけ遅くすることです。

同じ「白い歯」でも、長持ちが違います

保険のCAD/CAMインレーは、白くて、費用も抑えられます。
ですが正直にお伝えすると、すき間から虫歯が再発しやすく、数年でやり直しになることが少なくありません。つまり、貴重な“やり直しの回数”を早く使ってしまうのです。

一方、セラミックには、歯を長く守るための理由がそろっています。

  • すき間から新しい虫歯になりにくい
  • 歯が割れるのを防ぐ
  • 金属を使わないので、金属アレルギーの心配がない
  • 自分の歯に近い硬さで、噛み合う相手の歯にもやさしい
  • 保険の治療より、健康な歯を削らずにすむ

セラミックが長持ちすることは、データでも、当院が10年で約3,000本を手がけてきた経過でも実感しています。
白くするためではなく、その歯を一日でも長く残すための選択——それがセラミックです。

なぜ「1day(その日のうち)」なのか

当院がこだわるもう一つの理由が、“1day=その日のうちに入れる”ことです。これには、はっきりとした臨床上の意味があります。

歯を削った面を仮詰めのまま数日置くと、そのすき間から細菌が入り込み、無菌の状態を保てません。
けれど、削ったその日のうちに接着してしまえば、細菌の侵入を防ぎ、接着材のつきも良くなります。“同日接着”は、再発を防ぐための大事な一手なのです。

そしてもう一つ。
1dayには、お忙しい方にこそ大きな価値があります。通院の回数も、麻酔の回数も減らせる。何度も歯科に通う時間を、ほかの大切なことに使えます。
時間が限られた社会人の方にとって、「その日で終わる」ことは、想像以上に価値が大きい。実際、こうしたニーズは年々高まっていると感じています。

 

 

最後に——歯の寿命と、人生の長さを合わせたい

もちろん、セラミックにもデメリットはあります。保険が効かないので費用はかかりますし、強い力がかかれば割れるリスクもゼロではありません。

そのうえで私は、こう考えています。
「白い歯」だけが目的なら、保険で十分です。でも、自分の歯を長く残したい、やり直しを増やしたくない、限られた時間も大切にしたい——そう願う方にとって、1dayセラミックには確かな価値がある、と。

私がいつも思い描いているのは、歯の寿命と、その方の人生の長さが、ぴたりと重なることです。

最後まで、自分の歯で食べて、笑って、生ききっていただきたい。そのために、一回一回の治療で“やり直しの時計”を、できるだけ遅らせていく。

情報をすべてお伝えしたうえで、最後に選ぶのは患者さんご自身です。
あなたの歯と、あなたの時間、そして人生を守るために。私たちは、その選択を一緒に考えていきます。

よくあるご質問(Q&A)

Q. 保険のCAD/CAMインレーでは、いけないのでしょうか?

A. 「いけない」というわけではありません。白くて費用を抑えられる、よい選択肢のひとつです。ただ、すき間からの再発が起こりやすく、「やり直しの回数」を早く使ってしまいやすいのも事実です。“その歯を長く残す”ことを最優先するなら、セラミックをおすすめしています。どちらにも良さがあり、最後はご自身の価値観で選んでいただくものです。

Q. セラミックは、どのくらい長持ちしますか?

A. お口の状態や使い方によって変わるため、「必ず何年」とお約束することはできません。ただ、しっかり接着できたセラミックは、保険の修復物より長くもつことが報告されており、当院の長年の経過でもそれを実感しています。そして長持ちのカギは、材料だけでなく、その後のメンテナンスにもあります。

Q. セラミックでも割れることがあると聞きました。

A. はい、強い力がかかれば割れる可能性はゼロではありません。ただ、これには意外な側面があります。実は、セラミックが“割れてくれる”ことが、あなたの歯を守っていることがあるのです。もし、まったく割れない硬すぎる材料だったらどうなるか——逃げ場を失った強い力は、こんどは歯そのものに向かい、歯が割れてしまうことが少なくありません。とくに歯の根が割れる「歯根破折(しこんはせつ)」は、多くの場合そのまま抜歯につながってしまいます。もちろん、割れないに越したことはありません。けれど、いざというときに修復物が“身代わり”に割れて、大切な歯(とくに根)を守ってくれる——そう考えると、これは単なる弱点とは言い切れないのです。そのうえで、歯ぎしりや食いしばりが強い方には、かみ合わせの調整やナイトガード(マウスピース)で、割れにくくする対策も一緒に行います。

Q. 本当に、その日のうちに終わりますか?

A. 多くのケースで、削る・型取り・製作・装着までを1日で行えます。ただし、虫歯が深い場合や本数が多い場合など、お口の状況によっては複数回に分けることもあります。診察のうえで、正直にお伝えします。

Q. 費用はどのくらいかかりますか?

A. 歯の場所や治療の範囲によって変わります。カウンセリングで、保険の選択肢も含めて、メリット・デメリットと費用をすべて正直にご説明します。そのうえで、ご納得いただいてから進めますので、ご安心ください。

Q. いま入っている金属を、急いでセラミックに替えたほうがいいですか?

A. いいえ、問題なく機能している詰め物を、あわてて替える必要はありません。やり直しが必要になったそのときに、“次の一手”としてセラミックを選んでいただくのが、歯にとっていちばん無駄がありません。必要のない治療はおすすめしません。

関連ブログはこちら