治療について院長ブログ
「セラミックは割れる」——でも、それがあなたの歯を守っているとしたら
こんにちは。菊池歯科クリニックの菊池です。
セラミックの治療をご案内すると、「でも、セラミックって割れることがあるんですよね?」と心配される方がいらっしゃいます。
たしかに、強い力がかかれば、セラミックが割れることはあります。でも今日は、その“割れる”が、実はあなたの歯を守っているかもしれない——という、少し意外なお話をします。
もし「絶対に割れない」材料だったら?
ここで、ひとつ想像してみてください。
もし、どんな力にもびくともしない、絶対に割れない硬すぎる材料がお口の中に入っていたら、どうなるでしょうか。
強い力は、消えてなくなるわけではありません。修復物が受け止めきれない力は、行き場を失って、こんどは歯そのものへと向かいます。
その結果として起きるのが、歯の破折です。修復物は無傷でも、土台である歯のほうが割れてしまう。これでは本末転倒です。

いちばん怖いのは「歯根破折」
なかでも避けたいのが、歯の根が割れてしまう「歯根破折(しこんはせつ)」です。
歯の頭の部分(お口から見えている部分)が少し欠けるくらいなら、多くは修復できます。
けれど、歯ぐきの奥に隠れた根が割れてしまうと、ほとんどの場合、その歯は残せません。多くはそのまま抜歯になります。詰め物や被せ物はやり直せても、割れてしまった根は、元には戻らないのです。
つまり「割れない材料」は、一見すると安心に思えて、じつはいちばん大切な歯の根を、いちばん危険にさらしてしまうことがある、ということです。

セラミックは“身代わり”になってくれる
ここで、車のことを思い浮かべてみてください。
事故のとき、車のボディは、わざとつぶれるように設計されています。ボディがつぶれて衝撃を吸収することで、中の人を守る——「クラッシャブルゾーン」という仕組みです。ただ硬く頑丈なだけの車では、衝撃がそのまま人に伝わってしまいます。

歯とセラミックの関係も、これによく似ています。いざ強い力がかかったとき、セラミックが“身代わり”として割れてくれることで、土台の歯や、その根を守る。
割れたセラミックはやり直せますが、割れた歯の根は取り戻せません。守るべき優先順位で考えれば、「割れてくれる」ことは、決して単なる弱点ではないのです。

もちろん、割れないに越したことはありません
とはいえ、何度も割れてしまっては困ります。
ですから当院では、かみ合わせをていねいに調整し、歯ぎしりや食いしばりが強い方にはナイトガード(マウスピース)をご提案するなど、そもそも割れにくくする工夫も大切にしています。
材料選びも、ただ「硬ければよい」ではなく、その歯にかかる力とのバランスを見ながら決めています。
最後に
私たちがいつも考えているのは、「その歯を、一日でも長く残すこと」です。
その視点から見ると、“割れる”という性質さえも、歯を守るための設計の一部になります。
「割れる」と聞いて不安に思われた方に、少しでも安心していただけたら。そして、ご自身の歯と根を守る選択を、一緒に考えていけたらと思います。

よくあるご質問(Q&A)
Q. それなら、割れにくい硬い材料(ジルコニアなど)のほうが安心ではないですか?
A. 硬い材料が悪い、というわけではありません。大きな力がかかる奥歯やブリッジなど、強さが求められる場面では、ジルコニアのような材料が適していることもあります。
大切なのは「硬ければよい」ではなく、その歯にかかる力や場所に合わせて選ぶこと。当院では、歯を守るという目的から逆算して、一本一本に合った材料を選んでいます。
Q. もしセラミックが割れたら、どうなりますか?
A. その場合は、新しいものを作り直します。ここで大切なのは、割れたのが歯ではなく修復物のほうだったということ。修復物はやり直せますが、歯や根は取り戻せません。
割れた原因(かみ合わせや食いしばりなど)も一緒に確認し、次はより割れにくくなるよう対策します。
Q. 食いしばりが強いのですが、セラミックは向いていませんか?
A. 向いていない、ということはありません。食いしばりや歯ぎしりが強い方には、かみ合わせの調整や、ナイトガード(就寝時のマウスピース)で、歯と修復物にかかる力を和らげる工夫をします。
リスクも正直にお伝えしたうえで、その方に合った形でご提案します。
Q. 銀歯や保険の白い歯でも、同じように歯を守ってくれますか?
A. 少し性質が異なります。金属はほとんど割れないぶん、強い力がそのまま歯に伝わって、歯のほうが傷んでしまうことがあります。保険の白い歯(CAD/CAM)は、すき間からの再発が起こりやすいという別の弱点があります。
それぞれに良さと弱さがありますので、何を優先したいかで選んでいただくのがよいと思います。



