治療について院長ブログ
ラバーダム防湿で根管治療の成功率は変わる?院長が大切にしている5つの理由
「先生、根の治療って、やり直しになることがあるんですよね?」
先日、ある患者さんから、こう尋ねられました。
正直にお答えします。根管治療(歯の根の中を治療すること)は、歯科治療の中でも、やり直しが起こりやすい治療のひとつです。一度しっかり治したつもりでも、数年後に再発してしまう。その悔しさを、私は30年の臨床の中で、何度も味わってきました。
だからこそ当院では、根管治療のとき、必ず「ラバーダム防湿」という処置を行っています。
この記事では、「ラバーダムをすると、なぜ成功率が変わるのか」を、できるだけわかりやすくお伝えします。
これから根の治療を受ける方、いま治療中の方の、不安が少しでも軽くなればうれしく思います。
ラバーダムって、なんですか?

ラバーダム防湿(以下、ラバーダム)とは、治療する歯だけを残して、お口の中をゴム製のシートで覆う処置のことです。
イメージしていただきやすいのは、外科手術のときに使う「覆い布(ドレープ)」です。
手術では、患部以外を布で覆って清潔な状態をつくりますよね。あれと同じ発想で、歯科治療でも「治療する歯」だけをシートの穴から出して、ほかの部分と隔離します。
ラバーダムが活躍するのは、主に根管治療(歯の神経を取り除く治療)や、詰め物・被せ物を接着剤で着ける治療です。
なかでも根管治療では、成功率を大きく左右します。海外では「当たり前の処置」として定着しているほどです。
当院がラバーダムを使う、5つの理由
ラバーダムには、患者さんにとっても、私たち歯科医師にとっても、はっきりとしたメリットがあります。ひとつずつお話しします。
① 唾液の中の細菌から、治療する歯を守る
根管治療の目的は、歯の内部から細菌を取り除き、二度と感染させないことです。
ところが、私たちの唾液の中には、1mlあたり数億個ともいわれる細菌がすんでいます。ラバーダムを使わないと、せっかくきれいにした根の中に、治療中の唾液からまた細菌が入り込んでしまう。これでは、消毒している先からドアを開け放しているようなものです。
治療する歯だけを隔離すれば、唾液による汚染を防げます。
② 殺菌力の強い消毒薬を、安全に使える
根の中を消毒するときには、殺菌力の強い薬剤を使うことがあります。ただ、この薬がお口の粘膜や舌に触れると、ヒリッとした痛みの原因になることも。
ラバーダムで治療部位以外を覆っておけば、万が一こぼれても、お口の中には流れません。だからこそ、効果の高い薬を、安心して使えるのです。
③ 歯科医師が、治療だけに集中できる
お口の中は、暗くて、狭くて、舌や頬も動きます。実は、精密な治療をするには、なかなか手ごわい環境です。
ラバーダムを着けると、舌や頬が治療の邪魔をしなくなり、視界もクリアになります。「治療する歯」だけに集中できる――これは、治療の質に直結します。
当院では、ここにマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を組み合わせています。ラバーダムで邪魔者を取り除き、顕微鏡で根の中を拡大して見る。この2つがそろってはじめて、肉眼では見えなかった世界が見えてきます。
④ 器具を、誤って飲み込まないように
根管治療では、「ファイル」と呼ばれる、細い針のような器具を使います。治療中に、外れた詰め物や被せ物がお口に落ちることもあります。
ラバーダムがあれば、万が一こうしたものを落としても、シートの上で受け止められます。喉の奥に落ちて飲み込んだり、気管に入ったりする心配がありません。
⑤ 水が、喉に流れ込まない
歯を削るときには、削りかすを洗い流すために水を使います。この水が喉に溜まって、苦しく感じる方もいらっしゃいます。
ラバーダムを使うと、水はシートの上に溜まるので、喉に直接流れ込みません。「お水が苦手で…」という方にも、ずいぶん楽に治療を受けていただけます。

結局、ラバーダムで成功率は上がるの?
結論からお伝えします。ラバーダムを使うことで、根管治療の成功率は上がります。
少しだけ、根管治療そのものの話をさせてください。歯の中には「歯髄(しずい)」という、神経や血管の通る組織があります。虫歯が深く進んで、ここに細菌が感染すると、強い痛みが出たり、根の先に膿が溜まったりします。
根管治療では、この感染した歯髄を取り除き、根の中を消毒し、薬剤でしっかり封鎖します。この一連の処置でいちばん大切なのは、「治療の最中に、新しい細菌を中へ入れないこと」。
もうお気づきですね。ラバーダムは、まさにそのために使う処置なのです。使わずに治療すると、消毒したそばから唾液の細菌が入り込み、再発のリスクが高くなってしまいます。
ところが――これほど大切なラバーダムですが、日本の一般的な歯科医院での使用率は、わずか5.4%という調査結果があります(日本歯内療法学会の報告/2003年・2011年)。
一方、根管治療を専門とするアメリカの歯科医師は、9割以上の治療でラバーダムを使っています。やや古いデータではありますが、この差は、今も決して小さくないと感じています。

歯科医院を選ぶときに、見てほしいポイント
もしあなたが、質の高い根管治療を受けたいと思うなら、医院選びのときに、次の3つを確かめてみてください。
- ホームページの根管治療のページに、ラバーダムについての記載があるか
- 初診や治療の前に、「根の治療でラバーダムは使いますか?」と直接たずねてみる
- マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)やCTを導入しているか
当院では、根管治療でラバーダムとマイクロスコープを使うことを、当たり前のこととしてお伝えしています。隠す理由がどこにもないからです。気になることは、どうぞ遠慮なく聞いてください。
よくあるご質問
Q. ラバーダムをすると、息が苦しくありませんか?
A. 鼻でふだんどおり呼吸していただけますので、苦しくはありません。むしろ、水や器具が喉に流れない分、「楽だった」とおっしゃる方が多いです。
Q. ラバーダムは追加で費用がかかりますか?
A. 当院では、根管治療に必要な処置として行っています。費用について不安があれば、治療を始める前に必ずご説明しますので、ご安心ください。
Q. どこの歯科医院でもラバーダムをしてもらえますか?
A. 残念ながら、日本ではまだ使用率が高くありません。受診の前に、ホームページやお電話で確認されることをおすすめします。
まとめ
ラバーダム防湿は、ゴムのシートで治療する歯を隔離し、唾液の細菌・薬剤の漏れ・器具の誤飲などから患者さんを守る、根管治療には欠かせない処置です。
「お水が喉に流れない」「安心して治療を受けられる」――患者さんにとってのメリットも、決して小さくありません。
根管治療は、再発を防ぐことが何よりも大切です。一度取った神経は戻りませんし、再治療を繰り返すほど、歯の寿命は縮んでいきます。だからこそ、最初の一回を、丁寧に。
私たちが予防にこだわるのも、根の治療にこだわるのも、目指している場所は同じです。あなたの歯と、一生付き合っていく。そのための大切な処置のひとつが、ラバーダムなのです。
根の治療で迷ったときは、どうぞ気軽にご相談ください。
常陸太田市 菊池歯科クリニック 院長 菊池健志



